- STUDIO
- 2021.04.08
オーディション収録用機材セッティング~ナレーション編
今回はMIT STUDIOで実際に収録した、オーディションの機材セッティングについてお話いたします。オーディションの内容は、指定されたキャラ設定にそったお芝居をした『ナレーション資料』と『歌唱資料』になります。この収録音源がオーディション資料となり、配役が決まる資料の一つなのでとても重要な収録です。
ナレーション収録の機材セッティング
まずはナレーション収録から説明していきます。オーディション用のナレーションは過度な処理などはしません。良くも悪くも実際に演者さんが行ったパフォーマンスとニュアンスが変わってきてしまうことがあり、資料を聞き興味を持ってくださった方の前で実際にパフォーマンスをした時に「思ってたのと違う」とならないようにするためです。
ただ普段、世の中で聞いているのがそういった処理されている音声なので、ありのまま過ぎるもの「違和感」につながります。なので必要なことはしっかりとしますが、こちらで処理や演出をしすぎない、ことを心がけて作業しています。それではセッティングを紹介していきたいと思います。
ナレーション収録用機材リスト
- Neumann 87Ai
- AMEK9098
- SSL Line Input (Fader)
- カフ
- Urei 1178
- ProTools Input

座りか立ちかは演者さんにお任せしていますが、長時間の収録が多いので基本的に座りで用意しておくことが多いです。

マイクは「Neumann 87Ai」で、プロユース収録スタジオではよく見る一般的なマイクです。ナレーションの収録はどのプロユーススタジオでもこのマイクを利用していることが多いです。出力に近いほど音質に関わってくるので、「演者さんのパフォーマンス(出力)」の次は『マイク』です。あくまで出力が最重要ですが、その次に来る重要な立ち位置になります。
「Neumann 87Ai」はよく見るからなんかやだ(笑)という人もいるかと思いますが、そこは以前、ブログでご紹介したようにプロユーススタジオのスタンダードですので、選ばれるのにはしっかりとした理由があります。
関連リンク:ミキシングコンソール~SSL SL4064G@STUDIO1&2
関連リンク:ナレーション収録時にマイクのON/OFFを切り替える『カフボックス』
Neumann 87Aiが選ばれる理由
- 音質が良い、マイクの感度が高くて、加工感、EQ(イコライザー)感もない。
- 現行品で売られているため本数を揃えやすい、壊れた時の修理や替えがきく。個体差が少ない。(決して安いわけではありません)
- どこのプロユーススタジオに行っても大抵あるので安心。使い勝手もわかっている。急な追加収録があった際、他のスタジオでの収録だとしても音質を揃えやすい。
- 音質が良い、マイクの感度が高くて、加工感、EQ(イコライザー)感もない。
これらのことから選ばれる理由になってきます。
マイクプリアンプは「AMEK9098EQ」です。ルパートニーブ氏の作ったコンソールのチャンネルストリップになります。音は太めで少しエッジが立つ印象を受けます。ゲインのノッチが6dbステップなのですが、0dbから始められ、Trimがプラスにもマイナスにも6dbついているのでレベルのコントロールがしやすいのも特徴です。またEQセクションもついていてとても使いやすいです。今回は無駄なロー成分がコンプレッサーで引っかからないようにHPF(ハイパスフィルター)で70Hzぐらいまで回してカットしています。
関連リンク:NEVE Electronics社製マイクプリアンプのご紹介
SSL Line Inputを通しているのはフェーダーを使い、コンプレッサーにいく音量を調整するためです。

ボソボソとつぶやくようなセリフや叫ぶようなセリフの時は、どうしても声量の差が出てしまいます。その際に音量が小さすぎてS/Nが悪かったり、大きすぎてコンプレッサーに引っかかる量が増えてしまうと、良くも悪くも音質に変化が出てしまいます。それを軽減するためにコンプレッサー前で音量を調節します。かといって一定に聞こえすぎるようにしてしまうと、強弱のない演技に聞こえてしまうので注意が必要です。コンプレッサーは「Urei 1178」を使っています。
関連リンク:プロユースの定番コンプレッサー『Urei(Universal Audio)1176』の魅力・特徴
「Urei 1176」のステレオバージョンのコンプです。なぜ1178を使っているのかというと、MIT STUDIOではラジオCMなど複数人で録る掛け合い収録があり、その時に「Urei 1178」だと同じ大きさで2ch分のコンプレッサーとして使えるので、2台あれば4人までの同時収録ができるからです。それなら一人の収録の時は1176の方がいいんじゃないかと、考えたことがあり実際に使ったことがあるですが、1176だとリダクションの感じが少し違うのと、ハードにリダクションした時の「コンプかかった感」が1178に比べて少し気になったので、今は1178を選択することが多いです。
いかがだったでしょうか。今回はオーディション収録でのナレーションのセッティングにだけ触れましたが、次回は歌のセッティングについてご説明していきたいと思います。このようにMIT STUDIOでは内容に合わせた収録を行っております。ぜひお気軽にご相談・お問合せお待ちしております。
著者:(音楽エンジニア)