- 機材紹介
- 2020.01.09
プロユースの定番コンプレッサー『Urei(Universal Audio)1176』の魅力・特徴
MIT STUDIOの機材はヴィンテージ機材が多い印象がある方が多いかもしれませんが、プロユースのレコーディングスタジオとして定番の機材も、もちろんご用意しています。今回は定番機材の一つであるコンプレッサー『Urei(現Universal Audio)1176』をご紹介いたします。
レコーディングに欠かせないコンプレッサー
コンプレッサーとは音を圧縮し、大きさの大小の差を少なくすることにより音を聴きやすくするものです。その中でも「1176」というこのコンプレッサーは見たことがある人は多いのではないでしょうか。

MIT STUDIOでは常設を含め7台の1176をご用意しております。
1176はコンプレッサーのファーストチョイス
VoRec(ボーカルレコーディング)など、出向で他のスタジオに録音しに行くけど連絡する時間がなかった時、または私達がMIT STUDIOに来てくださるエンジニアさんと連絡が取れなかった時。
現場で1176があればそれでOK、1176って(当然)あるよね?となることが多くあります。それほどにスタジオに浸透している機材なのです。
シンプルで使いやすく高い実用性
1176はスレッショルド(どのぐらいの音量がきたらコンプが掛かり始めるか)の値がレシオ(圧縮比率)によって固定です。その代わりにINPUTのツマミでスレッショルドに当てにいく音量を変えます。
そしてOUTPUTのツマミで最終的な音量を決めるという、シンプルで使いやすいものになっています。INPUTのツマミを回せば回すほど音量が上がっていきコンプがかかる。なんだかSSLのコンプレッサーのオートメイクアップゲインに似たものを感じますね。
関連記事:ミキシングコンソール~SSL SL4064G@STUDIO1&2
高速のアタックタイムで安定したレベリングを
コンプレッサーは動作タイプによって特徴が異なります。1176はFET:Field Effect Transistor (電界効果トランジスタ)という回路を用いたコンプレッサーで、アタックタイム、リリースタイム共に早くできるのが特徴です。
中でも1176は驚異的なアタックタイムを誇り、最速なんと0.02msです。最遅にしても0.8msという速さです。これにより立ち上がりの早い音のピークも確実に捉えてレベリングすることができます。
MIT STUDIOにある他のコンプレッサー「CL-1B」のアタックタイムが最速で0.5ms、最遅で300msというのと比較すると、その早さがわかっていただけるかと思います。
なんといっても独特の1176サウンド
通すだけで加わる気持ちのいい歪み感と1歩前に出て来て主張してくる音圧感。決してナチュラルとはいえないですが、この音を求めて1176を使うことが多いのではないでしょうか。
そして1176といえば忘れてはならないのが、このレシオの同時押しです。二つの同時押しや全押し、いくつか組み合わせはありますが、とにかく言えるのがとてもハードにかかるということです。ブリティッシュモードと呼ばれる使い方も、1176らしさの一つと言えるでしょう。
個性あふれる多彩なリビジョン
1176は名機と呼ばれていますが、現在に至るまでにいくつものアップデートをしています。そのリビジョンごとにキャラが違うので、1176を使って「惜しいけど違う」と感じたら、違うリビジョンのものを使うのもありかもしれません。以下に簡単にリビジョンについて記します。
~Urei時代~
- Rev.A(Serial Numbers: 101-125)
- Rev.AB(Serial Numbers: 125-216)
- Rev.B(Serial Numbers: 217-1078)

いわゆる 「Bluestripe」 と呼ばれる初期モデルです。もう手に入れるのが難しいものになっています。
- Rev.C(Serial Numbers: 1079-1238)
- Rev.D(Serial Numbers: 1239-2331)
- Rev.E(Serial Numbers: 2332-2611)
- Rev.F(Serial Numbers: 2611-7052)
- Rev.G(Serial Numbers: 7053-7651)

「Blackface」 と呼ばれる初期~中期モデルです。これも手に入れるのが比較的難しいものになっています。MIT STUDIOではRev.DとRev.Fを1台ずつ所有しています。
- Rev.H(Serial Numbers: 7652- 8000+)

「Silverface」 と呼ばれる中期~後期モデルです。多くの方が見たことがあるのがこのモデルではないでしょうか。MITでは4台所有しています。
~Universal Audio時代~
- 「Universal Audio Ressue 1176LN」

Rev.C,D,Eをもとに復刻された現行モデルです。今流通しているモデルはこの型になります。この中でも2回ほどマイナーアップデートしているようです。
- 「Revision AE ’’Anniversary Edition ‘‘」

Rev.A,Eをもとに復刻された限定モデルです。10msスローアタックやレシオ2:1といった、復刻でありながら新しい機能がついています。
納得の使い心地をお試しください
1176の魅力を少しでもお伝えできたでしょうか。1176は調整の仕方で音質やコンプのかかり方がだいぶ変わってしまいますので、MIT STUDIOではなるべく個体差が出ないように、すべての個体を比べて調整し、メンテナンスしています。この機会に改めて1176の魅力を体感してみてください。
実はMIT STUDIOにはPurple AudioのMC76というものもあるので、そちらもぜひお試しください。 お問い合わせお待ちしています。


著者:加藤 智明(音楽エンジニア)