- STUDIO
- 2026.11.06
ミックスの仕上がりは録音で変わる~ボーカルレコーディングで意識したい5つのポイント
こんにちは!音楽エンジニアの荒谷です。MIT STUDIOに入社して6年が経ち、ミックスの機会が増えてきたため、今回はミックスまで見据えたレコーディングの考え方についてお話いたします。
「歌もの」の楽曲制作において、ボーカルの存在感や聴き取りやすさは、楽曲全体の印象を左右する重要な要素です。ミックスでEQやコンプレッサーを使って音を整えることはもちろん重要ですが、最終的な仕上がりは録音段階での判断にも大きく影響されます。今回、ボーカルの魅力を引き出すために、レコーディングの段階で私が意識しているポイントをご紹介します。
1. マイク選びは、声と楽曲の相性から考える
レコーディングでは、マイクの種類や特性によって録音される音の印象が変わります。高域の抜け方、低域の厚み、声の輪郭など、マイクごとに特徴があるため、単純に高価な機材や定番の機種を選べばよいというわけではありません!歌い手の声質や歌い方、楽曲の方向性に合わせて選択することが大切です。
例えば、声の明るさや抜け感を活かしたい場合と、中低域の厚みを重視したい場合では、適したマイクやセッティングの考え方が変わります。また、録音した音だけでなく、オケと合わせたときにどのように聴こえるかも重要な判断基準です。
2. マイクとの距離や角度
使用するマイクだけでなく、マイクとの距離や角度によっても録音される音は変化します。マイクに近づくと低域が強調される近接効果が生じる場合があり、距離を変えることで声の厚みやバランスを調整できます。また、マイクの角度や歌い手の立ち位置によって、高域の印象や息の音、破裂音の入り方などが変わることもあります。
こうした違いを踏まえ、歌い手の声やパフォーマンスに合わせてセッティングを調整することが、自然で扱いやすい素材を録音するためのポイントです。
3. 録音レベルは、余裕を持って設定する
録音時には、音量だけでなく、ピークレベルや突発的な音量変化にも注意が必要です。歌い出しは小さくても、サビや高音のパートで急に音量が大きくなることがあります。そのため、事前に楽曲の構成や歌い方を確認し、最も大きな声が出る場面も想定して入力レベルを設定します。
デジタル録音では、クリッピングによる歪みを避けることが重要です!(歪んでしまうと後処理ではどうにもできないことが多いです…)十分なヘッドルームを確保し、後工程で扱いやすい状態で収録することを意識しています。
4. ミックスを見据えてテイクを判断する
録音では、音程やリズムが正確であることに加えて、歌詞の伝わり方、声の表情、楽曲の中での役割も重要です。近年の楽曲では、メインボーカルだけでなく、ユニゾン、ハモリ、ダブル、コーラスなど、複数のボーカル素材を組み合わせることが多いです。それぞれの素材が単独で良く聴こえることと、重ねたときに楽曲としてまとまることは、必ずしも同じではありません。
例えば、メインボーカルでは言葉の明瞭さを重視し、コーラスでは厚みや広がりを重視するなど、パートごとの役割を考えながらディレクターや作曲者がテイクを判断します。録音段階からディレクターや作曲者の完成形をイメージすることで、編集やミックスで必要となる作業を見通しやすくなります。
5. 録音とミックスを一貫して考える
録音とミックスは別々の工程ですが、互いに密接に関係しています。録音時にどのような音を目指したのか、どのテイクを選んだのか、どのような声の特徴を活かしたいのか。こうした情報が共有されていると、ボーカルエディット、ミックスでも制作意図を反映しやすくなります。もちろん、録音後のEQやコンプレッサー、空間系エフェクトによって音を調整することもできます。しかし、録音素材の状態によっては、後工程だけで解決することが難しい場合もあります。録音の段階から完成形を意識し、必要な素材を適切に収録しておくことが、最終的なクオリティにつながります。
ボーカルの存在感は、ミックスの処理だけで決まるものではありません。マイクやHA、コンプレッサーなどの機材選び、セッティング、録音レベル、テイクの判断など、録音段階での積み重ねが、最終的な音作りを支えています。
当スタジオでは、レコーディングからミックスまで、楽曲の方向性や制作意図を踏まえた音作りを大切にしています。ボーカルレコーディングや楽曲制作についてご相談がありましたら、お気軽にご相談・お問合せください!
著者:荒谷莉子(音楽エンジニア)