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- 2026.01.14
レコーディングスタジオのコンデンサーマイクの大定番~NEUMANN「U87i」と「U87Ai」の違いを解説
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。スタジオマイクの世界で、「とりあえず U87」という言葉を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。今回は、NEUMANN(ノイマン)の U87の種類についてご紹介いたします。
定番マイク「87」が時代を超えて愛される理由

NEUMANNの U87 は、半世紀以上にわたってプロの収録現場で使われ続けてきた、まさに「基準」とも言えるコンデンサーマイクです。そんなU87には、大きく分けて「U87i」と「 U87Ai」という2つの世代が存在します。
MIT STUDIOでも、この「2種類のU87」を用途に応じて使い分けています。見た目はほとんど同じですが、実は内部構造や音の傾向には、はっきりとした違いがあります。今回は、その違いを歴史とともに、わかりやすく解説していきます。
U87誕生の背景
U87が登場したのは 1967年。それ以前の名機 U47 や U67 の流れを汲みつつ、下記のコンセプトで開発されました。
- トランジスタ式
- 扱いやすい
- どんな用途にも対応できる
ボーカル、ナレーション、アコースティック楽器、ドラムのオーバーヘッド、さらには放送用途まで、その万能さが評価され、U87は瞬く間に世界中のスタジオへと広まっていきました。この初期モデルが、いわゆる「U87i」です。
U87iとは?
U87i は、1967年から1986年頃まで製造された初代モデルです。現在では「ヴィンテージU87」として扱われることも多く、柔らかさと丸みのある音質が特徴だと言われています。内部回路は当時の設計のままで、感度は現代基準ではやや低め。その分、ピークが穏やかで、耳に刺さりにくい音と感じる人も少なくありません。
U87Aiとは?
1986年、NEUMANNはU87を改良し、U87Ai を発表します。この「Ai」という表記は、回路のアップデートを意味しており、最大の変更点は 内部アンプ(ヘッドアンプ)の再設計 です。
U87Aiでは、下記の改良が行われ、小さな声や繊細な音も、よりクリアに、より現代的に収録できるようになりました。
- 感度の大幅な向上
- ノイズ性能の改善
現在、新品で購入できるU87は、すべてこの U87Ai です。
電源も 48Vファンタム電源専用となり、現代のオーディオインターフェースやミキサーとの相性も抜群。プロ・アマ問わず、安心して使える仕様になっています。
音の違いをどう感じるか
よく言われる傾向としては、次のような違いがあります。
U87i
- 少し暗め
- 丸くて柔らかい音
U87Ai
- 明瞭で輪郭がはっきり
- 抜けが良い音
もちろん、これはあくまで一般論であり、録り方、プリアンプ、歌い手・演奏者によって印象は大きく変わります。ただ、現代の制作環境では U87Aiを標準機として使用しているスタジオが多く、扱いやすいと感じる人が多いのも事実です。
結局どちらを選ぶべきか?~ MIT STUDIOでの使い分け
MAエンジニア視点での、MIT STUDIOでは使い分け以下の通りに使い分けております。
U87i
- 張りの強いセリフに使用(感度が低めなため、割れにくい)
U87Ai
- アフレコ、ナレーションなどスタジオの標準マイクとして使用
- ささやき声など、感度が必要な収録に最適
現在のプロスタジオや、放送局で標準として使われているのは、ほぼ間違いなく U87Ai です。それでもU87iが今なお語り継がれるのは、単に「古いから」ではなく、音楽と音声の歴史を刻んできたマイクだからでしょう。
マイクは「新しいものが必ず良い」というわけではありません。そこが、この世界の面白さでもあります。U87は、時代が変わっても「これで録れば間違いない」と言わせてしまう、不思議な説得力を持ったマイクなのです。MIT STUDIOでは収録内容に合ったマイク選びのご相談・ご提案いたします。ぜひお問合せお待ちしております。
著者:立野勝也(MAエンジニア)