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  • 2022.04.06

ヴォーカルレコーディング中のトラブル解決~トークバックが故障した際の対処法

今回は、ヴォーカルレコーディングにおける「トークバック」についてお話します。

「トークバック」は収録スタジオになくてはならないもので、トークバックのボタンを押している間だけ、コントロームルームとブースとでコミュニケーションができる仕組みです。

もしも、ヴォーカルの録音にトークバックがなかったら、1テイク終わるごとにブースの扉をあけて「今の良かったね!この調子でもう1テイクもらってもいいかな?」といったやりとりをしに、ブースに行かなくてはなりません。

普段、私たちは意識せず、当たり前のようにトークバックを使っていますが、今回はそんなトークバックが故障した際の対応方法についてご紹介します。

トークバックが故障した際の対処方法は「即席トークバック」

先日、ヴォーカルのレコーディング行った時の出来事です。楽曲へのアプローチなどの打ち合わせも終わり「さぁやりますか!」とアーティストさんがレコーディングブースへ入りました。声出しも終わっていて準備バッチリです。

ディレクター「じゃあ一度頭から曲を流してみますね」
ヴォーカリスト「・・・。」
ディレクター「もしもーし?」
レコーディングエンジニア「・・・もしやこれ、トークバックが聞こえていないのでは?」

確認してみると、やはりトークバックの回線だけ何かがおかしく、こちらの声が届いていない様子です。ヘッドホンの断線やキューボックスの故障、ケーブルや卓の不具合など、原因は色々と考えられます。

しかし、ついさっきまで使えていた機能が、急に使えなくなる事は、レコーディング現場ではありえる話なので、ひとまず確認できるところだけチェックし、すぐ復旧できない問題ということを確認し、とりあえず、今この場を乗り切ることにシフトし「トークバックがないなら立てればいいじゃない」ということで、とりあえずマイクを立てました。

即席トークバック様に適当なマイクを準備

このマイクをマイクプリを通してProToolsへ送ります。そして会話を聞きやすくするために、コンプレッサーを使用し、そのアウトをキューボックスのインプットに入れてあげれば、即席トークバックの完成です。

トークバックの音量をコンプレッサーで制御

ただし、これだと録音する時に、スピーカーからの音がトークバック用のマイクにも乗って、アーティスト側にも聞こえてしまい、アーティストが1テイクごとにトークバックのボリュームを上げたり下げたりしなければいけません。ProTools上で開け閉めするのはスピード的に現実的ではありません。「開け閉めするのが大変なら自動化すればいいじゃない」というわけで、自動化してみました。

セッション全体にOSC信号を引く
コンプレッサーでダッキング

セッション全体に信号(OSC)をひき、ProToolsが走ると同時に、トークバックがダッキングされてレベルが下がるという仕組みです。これはリモートレコーディングの時にも行っています。

関連リンク:リモートレコーディングの方法~制作サイドがリモート参加だった場合

この対応で全ての障害は取り去ることができ、とりあえず一安心です。滞りなくレコーディングが進んでいきました。

そして、小休止タイムにディレクターさんから「このトークバックって手元でオンオフできないかな?」と相談がありました。何せ現状では、こちらの会話がアーティストサイドに全て聞こえています。音質とかモニターバランスの話とか、ちょっとした雑談まで聞こえてたら、アーティストが集中できません。そんな時に都合の良いものが「セレクター」です。

即席トークバックのオンオフを行うセレクター

これは、ヴォーカルのテイクなどが複数ある時に、ボタンで瞬時にテイクを切り替えて聴けるという優れものです。今は、ProToolsの機能が進化したことで似たようなことができるので、使われる機会が少なくなっていますが、これがないと効率が悪い現場もまだまだあります。

このセレクターをP、roToolsとキューボックスとの間に接続して回線を通す、または断線する、という事を、ディレクターさんの手元でやってもらうことにしました。通常の「押している間だけトークバックが繋がる」というものではなく、スイッチで切り替えるものなので、使い勝手が少し違いますが、この機能があるのとないのとでは、レコーディングの進めやすさにかなりの差がでました。

このような感じで、今回は、ヴォーカルレコーディングを無事終えることができました。普段、当たり前のように使っている機能が、こんなにありがたいものなんだと改めて感じるとともに、今までの作業の経験が、どこで役に立つかわからないと思った出来事でもありました。基礎があってこその応用になります。

このような感じで、こんな時はどうしたらいいの?またはどうしたら良かったんだろう?といった相談など、何かあれば、お気軽にお問合わせください!何かの手助けになれば幸いです。MIT STUDIOは急なトラブルでも、しっかりと対応いたします。ぜひお問い合わせお待ちしております。

著者:(音楽エンジニア)

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