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- 2026.10.14
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』をドルビーシネマと通常上映で鑑賞~MAエンジニアが感じた映画体験の違い
先日、「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」を2回鑑賞してきました。1回目はドルビーシネマの字幕版。そして2回目は、通常上映の吹替版です。
せっかくなので、作品そのものの感想というより、エンジニア目線で「ドルビーシネマ」と「通常上映」での映画体験がどのくらい違うのかというところをお話いたします。
関連リンク:スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ公式サイト
ドルビーシネマで感じた「映像」と「音響」のクオリティ
結論から言ってしまうと、今回の「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」は、ドルビーシネマで観て本当に良かったと感じました。本作は日本でもドルビーシネマ上映が用意されており、公式にも「圧倒的な映像とサウンド」が特徴として紹介されています。実際にドルビーシネマで観てみると、まず感じるのが「映像の見やすさ」です。暗いシーンでも黒がしっかり沈み、その一方で暗部の情報が潰れていない。明るい部分はしっかり明るく、色も非常に鮮やかです。
通常上映で観たときももちろん映像は十分綺麗なのですが、ドルビーシネマと比べてしまうと、細かい部分の階調やコントラストの違いが気になってきます。特にスパイダーマンのように、夜の街や暗い場所でのアクションが多い作品では、この違いがかなり効いてきます。「映像が綺麗」というより、画面の中に存在する情報量が多く感じられるという表現のほうが近いかもしれません。
音響エンジニアとして一番印象に残ったのは、やはり「Dolby Atmos」です。通常上映でももちろん映画として成立する十分な音響環境なのですが、ドルビーシネマでは「音量が大きい」ということではなく、音の定位と空間の作り方が非常に丁寧だと感じました。
例えばアクションシーン。普通なら「爆発音が鳴った」、「何かが飛んできた」という情報として受け取るところが、Atmosでは音がどこから来て、どこへ移動していくのかが非常に分かりやすいです。前方のスクリーンから出ている音だけではなく、サラウンドや天井方向の音まで含めて、劇場全体がひとつの音場になっている感覚があります。
ここが、音響的にはかなり重要です。良いサラウンドというのは、単純に「後ろから音が聞こえる」ことではありません。音の定位、移動、奥行き、前後のつながり、そして何も鳴っていない瞬間の静けさまで含めて、ひとつの空間を作ること。
特にドルビーの音響で良かったポイントの一つが、ピーターがクモ由来の遺伝子やホルモンが活性化して苦しむところの音響は、全方位からの音の情報が感じられ、ピーター視点の音の聞こえ方になるシーンがとても良かったです。
今回の作品では、その空間設計がかなり効果的に使われていると感じました。実際、海外のドルビーシネマで本作を鑑賞したレビューでも、音の定位や、ピーターの感覚を表現する細かな環境音の使い方が高く評価されています。
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「字幕」と「吹替」で印象が変わる
もうひとつ面白かったのが、「字幕版と吹替版の違い」です。ドルビーシネマでは字幕、通常上映では吹替という条件だったので、単純に「上映方式だけ」の比較ではありません。
字幕版では、当然ながら俳優本人の声をそのまま聴くことができます。主人公トム・ホランドをはじめとする俳優の声の質感、息遣い、演技としての微妙な間などは、やはりオリジナル音声ならではです。
一方で、吹替版は映像への集中度が高いと感じました。字幕を追わなくていいので、アクションシーンでは画面全体をしっかり見ることができます。
特にスパイダーマンのように画面の情報量が多い作品では、「字幕を読む」という作業がないだけで、視覚的な没入感はかなり変わります。ただ、音響エンジニアとして聴くなら、やっぱり字幕版のオリジナル音声に惹かれます。声そのものが作品の音響設計の一部だからです。
通常上映が劣っているわけではない
ここは強調しておきたいところです。通常上映が悪いわけでは、もちろんありません。2回目に観た通常上映も楽しめましたし、吹替版ならではの見やすさもあります。ただ私は今回の作品に関しては、「一番良い条件で観るならドルビーシネマ」という結論になりました。
映像のコントラスト、色、暗部の情報量。そして何より、Dolby Atmosによる音の空間表現。これらが組み合わさることで、「映画を観ている」というより、映画の世界の中に入っているような感覚が強くなります。そして個人的には、音響エンジニアとして「こういう音の作り方をするのか」と考えながら観られたのも非常に面白かったです。
上映環境によって受け取る情報・印象が変わる
同じ映画を「字幕と吹替」、「ドルビーシネマと通常上映」で2回観てみたら、映画というものは単に「作品を見る」だけではないんだと改めて感じました。同じ映像、同じ物語でも、上映環境によって受け取る情報・印象が変わる。特に音は、映像以上に「環境」の影響を受ける部分があります。今回の「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」は、そうした違いを体感するにはかなり面白い作品でした。
もしこれから観る予定がある方で、近くにドルビーシネマがあるのであれば、個人的にはぜひ一度体験してみてほしいです。特に音に注目して観ると、普段とは違った映画の楽しみ方ができると思います。私自身、2回観終わった今でも「もう一度ドルビーシネマで観たい」と思っています。それくらい、今回のドルビーシネマ体験は印象に残りました。
当スタジオでは、現在AtmosのMIXは未対応ですが、この視聴体験そのものが大きな勉強になりました。まだまだ研鑽を積み、それらをお客様に還元していけるように努めてまいります。
著者:安居翔貴(MAエンジニア)