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  • 2025.12.04

コンソール「SSL4000G」のメンテナンスで発生した音歪みトラブル~原因究明と解決のプロセスについて

こんにちは!MIT STUDIOが2025年5月に東新宿へ移転してから、早くも半年が経ちました。そして2025年も残るところあと1ヶ月、少しずつ年末の気配を感じる頃となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今回は、我々音楽エンジニアが日々最高の環境を整えておくために積極的に行っている、スタジオメンテナンス中に起きたトラブルについて、原因の突き止め方、解決方法をご紹介させていただきます。

SSL4000Gの音歪みトラブル

トラブルは「STUDIO 2」のSSL4000Gに起きました。チャンネルメンテナスの半分が終わり、後半のチャンネルに差し掛かった時に異常が発生しました。異常とはスピーカーから出ている音が歪んでいたのです。

SSL4000G

不具合部分の原因究明と解決までの流れ

①モジュールの差し直し

このようなトラブルの時に「まず最初にこれを試す」というお決まりの行動があります。それはモジュールの差し直しです。SSL4000Gはアナログ卓なので、接点が原因でのトラブルが非常によく起こります。接点復活剤を吹きつけて、何回か抜き差しします。これでだけで解決する場合も多いのですが、今回は原因が違ったようで、モジュールの差し直しをしても音は歪んだままでした。

隣のチャンネルでも試してみましたが、症状は変わらずコンソールの故障では無いようです。よってモジュールの何かが原因という、不具合箇所を特定することが出来ました。このような時には基本的にモジュールの頭から、順番にスペアのパーツを交換して原因を探っていくことが多いです。

不具合部分の確認作業

②各カード(Amp/EQ/ロジック/VCA)の故障をチェック

※メンテナンス時の回線は、以下の通りです。

PT OUT-Patch-HA(Amp)-Dynamics(Gate/Comp)-EQ-Insert-Fader(Analog)-Direct Out-Fader(VCA)-SP

個人的な体感では「Ampカード」、「EQカード」の故障で、音が歪むことが多いと感じています。また、Insertスイッチは特にガリの発生が多く、これもトラブルの原因になりやすい接点の一部です。Ampカード、EQカードと、交換して検証してみましたが、どれでも改善されませんでした。

そうなると、次に原因として考えられるのは「ロジックカード」、「VCAカード」です。この2つのカードを簡単に解説すると、

  • VCAカードは信号の音量をコントロールし、音質に関わる基盤
  • ロジックカードは信号のスイッチング、ルーティングを決める基盤

これらば、直接音質に関わる基盤ではないのですが、この基盤の故障によって音が歪んでしまうことがあります。ひとまず、VCAカードを交換してみましたが、結果は変わらず音は歪み続けていました。そうなると考えられる原因はロジックカードしかありません。最後の望みでロジックカードを交換してみたところ、無事歪み症状を改善されました。

普段は、原因になりにくいであろうと思い込んでいるパーツで音が歪んでいたため、解決するまでに時間を要しました。原因の切り分けに時間はかかりましたが、最後まで1つずつ確認を重ねたことで、無事に改善できました。

こうした日々の小さな積み重ねが、良い音づくりにつながると改めて感じています。MIT STUDIOでは、これからも気持ちよく音と向き合える環境づくりを続けていきます。今後も定期的な清掃と点検を続け、常に最良のコンディションで機材を使用できるよう心がけていきます。レコーディングに関するお問合せ・ご相談、お気軽にご連絡お待ちしております。

著者:冨部泰喜(音楽エンジニア)

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