- STUDIO
- 2023.04.04
レコーディングスタジオのメンテナンス~ヘッドホン『SONY MDR-CD900ST』の修理について
以前、MIT STUDIOで使用しているヘッドホン『SONY MDR-CD900ST』の、メンテナンスに関するご紹介がありましたが、今回は原因解明までの道のりと、具体的な修理の方法を、ご紹介します!
関連リンク:レコーディングスタジオ御用達モニターヘッドホン『SONY MDR-CD900ST』のメンテナンス
不具合の原因究明
今回メンテナンスをするヘッドホンの症状は、「Rが全く聞こえない」というものでした。MDR-CD900ST内のR側から音が出るまでの回線は、ジャック→L→R です。音の入り口であるジャックから、順に原因を探っていきます。
ジャックの手持ち部分を回すと、写真のようにカバーが外れ、接合部を確認できます。一見して断線はしておらず、はんだも綺麗にとまっているようでした。次にイヤーパッドとネジでとまっている前面板を外し、内部を見ていきます。
前面板に付いているドライバーユニットに、銅線が繋がっているため、先程と同様に状態を確認します。太い銅線はジャック、細い銅線はヘッドバンドを通りR側のドライバーユニットと繋がっています。見たところ異常はなさそうでした。R側のはんだも確認し問題なかったため、はんだ接合部の接触不良や経年劣化を疑い、一度つけ直してみます。
はんだの付け替え
外した銅線を間違ったところに繋いでしまわないよう、念の為ひとつずつ作業します。まずはんだごてで、はんだを溶かし、銅線を外します。溶けたはんだから、跳ねるように勢いよく外れる事がよくあるため要注意です。
次にコテで溶かしながら、はんだ吸収線を当てて取り除きます。はんだを吸い取り銀色に染まってしまった部分はもう使えないため、ニッパーなどで切り落として新しいところを使います。スポンジが水を吸うように、はんだが吸収される様は見ていて楽しく、私はこの作業がお気に入りです。
古いはんだを綺麗に取り除けたら、再度銅線を繋ぎます。まず該当箇所にはんだを流し込みます。富士山の形になるくらいが理想の量と言われていますが、太い銅線は埋まってくれないので少し多めに置きます。馴染みやすくなるため太い銅線には、あらかじめ銅線自体にはんだを付けておきます。細い銅線は、はんだから外した段階で、先がボロボロになってしまっていたので、少し切り落として繋げました。
動作確認
全て付け直したら、一度リファレンスを流して確認してみます。すると全く聞こえなかったR側からも音が出ました。最後にこちらで電気信号を流し問題なければメンテナンス完了です。
これまでの工程で症状が改善されなかった場合は、ドライバーユニット自体の故障や、ケーブル断線の疑いがあります。ジャックとL側、L側とR側で信号が流れることを確認し、問題があればその部品を交換します。『SONY MDR-CD900ST』は細かく部品ごとに販売されており、どこが壊れてしまっても簡単に修理、交換することができます。費用も時間も、そうかからない作業だと思いますので、ぜひ試してみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!ぜひMIT STUDIOまで、ご相談・お問合せをお待ちしております。
著者:音楽エンジニア