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  • 2023.01.14

レコーディングエンジニア目線でのCUEBOXの必要性

以前、MAチームのCUEBOXに関する記事がありましたが、今回は音楽チーム目線でも、『CUEBOX』について、ご紹介いたします。

関連リンク:収録内容の違いによる『CUEBOXの使い分け』について

音楽レコーディングで利用する『CUEBOX』

CUEBOXには「2MIX」と「1から5までの単独送り」、そして「Masterボリューム」があります。レコーディングエンジニアが、コントロールルームで音量のバランスを取っているものが、2MIXから流れます。また単独送りには、それぞれ任意の音を送ることができます。基本的にはMasterと2MIXだけあれば、問題なく収録を進めることができます。何かやりづらいなと思うことがあればエンジニアに言っていただければ、すぐに2MIXの中のバランスを調整します。

ヴォーカル録りでのCUEBOX

単独送りが必要な理由

ではなぜ単独が必要になってくるかというと、いくつか理由があります。その1つはヘッドホンをすることによっての自分の耳への聞こえ方の変化です。

ヴォーカルレコーディングの場合

例えば、ボイスメモとか留守番電話などに入っている自分の声を聞くと「誰これ?」という状態になりませんか?私はなります。自分の声はもうちょっと太いはずと信じています。でも他の人には、この「誰これ?」状態の声が、聞こえているわけなんですよね。いまだに信じがたい。

なぜこんな状態になるかというと、普段聞いている自分の声は、『自分の体で響いている音も拾っているから』なんです。胸とか喉とか顔とかで響いた音を聞いています。

それがヘッドホンをするだけでも、周りの音が遮断されるのに、ヘッドホンからはオケが流れてくるし、聞こえてくる自分の声は「誰これ?」状態だし、体の響きの音は聞こえないから、自分の声は小さく聞こえるし、そもそも歌いやすいはずがないですよね。

そこで単独を使います。2MIXでバックのオケを歌いやすいボリュームにした時に、もし自分の声が小さく感じたら上げてみてください。グッと歌いやすくなります。ただし、上げすぎ注意です。自分の声が大きいと安心しますが、いつのまにかそれでオケが聞きづらくなっていて、リズムや音程をキープするのが難しくなっている場合があります。

リズムレコーディングの場合

Drums、Bass Gtrなどの、リズムをレコーディングするときなどにも、同じことがいえます。さすがに「誰これ?」状態にはなりませんが、いつも自分が聞いている生音が聞こえなくなると、演奏はしづらくなります。ヴォーカルレコーディングとは違い、コントロールルームでは全ての楽器が聞こえるようにバランスを取っています。なのでドラムの演奏者が、演奏やすいようにすると、今度は他の楽器の奏者が演奏しづらくなる、といったことが起きてしまいます。そこで単独を使うことによって、各々が自分の演奏しやすいバランスにすることができます。

他には自分だけが特定の音を聞きたい場合

例えばリズムの録音をする時には、ほぼ必ずリズムキープのためのクリックが必要になってくるのですが、演奏者のみが聞いてコントロールルームでは流しません。リズムが合っているかの判断などには必要ですが、曲の世界観に入り込めず、そのプレイやテイクが良いものなのか判断しづらくなるためです。

他にはもう録音してあるヴォーカルを、聞きながら演奏したい場合なども単独に返します。コントロールルームではオケの判断をしたいのでヴォーカルは小さくなっていることが多いからです。

ヴォーカルレコーディングの時も、仮歌やメロディーなどがあったほうが、歌いやすいことが多いです。その場合も録音するときには、判断ができなくなってしまうので、コントロールルームでは流しません。単独に送っておいて聞いてもらうことが多いです。

アシスタントエンジニアが『片耳だけヘッドホン』をしている理由

片耳だけヘッドホンをしている状態

私たちがアシスタントエンジニアをするときは、よく「片耳だけヘッドホン」をしている状態が多いです。これはCUEBOXの単独に、送りたい音が送れているのかを確認しつつ、コントロールルーム側の話を聞き逃さないようにすると、この状態になります。リズムなどは一度、単独の確認してしまえばヘッドホンを外してしまっても大丈夫なのですが、ヴォーカルのレコーディングは、ハモやコーラスなど色々なラインがあり、頻繁にCUEBOXの単独に送るものを切り替えるので、間違いがないように片耳ヘッドホンのまま現場を進めることも多いです。

先輩に言われて今でも大事にしていることがあります。

「2MIXのバランスはエンジニアがみるけど、CUEBOXの単独のバランスは、アシスタントがみるんだ。そこのバランスでもヴォーカルのパフォーマンスのクオリティが変わってくる」

単独を切り替えるごとに、音が大きくなったり小さくなっていたら、ブース内でいちいちバランスをとり直さなければならないですからね。細かいことですが、小さなストレスも積み重なると影響してきます。個人的にはそこのバランスもケアできてこそ、一番大切な2MIXのバランスもしっかりとれるようになれると思っています。

いかがだったでしょうか。「CUEBOX」意外と奥が深いですね。MIT STUDIOではアーティスト・役者の方々が、心地よく収録できる環境を日々心がけております。ぜひお問い合わせをお待ちしております。

著者:加藤 智明(音楽エンジニア)

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