- STUDIO
- 2020.04.01
音楽スタジオで使用するモニタースピーカーの名機~YAMAHA NS-10M
YAMAHA NS-10Mは、1978年に発売されて以降、業界標準のモニタースピーカーとして君臨する名機です。スタジオでは『テンエム』や『テンモニ』と呼ばれています。今回はこのスピーカーについてご紹介いたします。
モニタースピーカーとは?
音楽スタジオで使用されているスピーカーは、『モニタースピーカー』と呼ばれ、原音を忠実に再現することを目的として作られています。一般的なスピーカーとは違い、音楽を快適に聴いいていただくために、エンジニアが正しく音を判断するためのスピーカーです。音楽スタジオには大きく分けて、2種類のモニタースピーカーがあります。
ラージモニタースピーカーについて
『ラージモニタースピーカー』は、音楽スタジオの壁に埋め込んだり、床・台に置いて使用されます。このスピーカーは、主にブースで鳴っている音をそのままコントロールルームで再現するために使われており、音のおおまかなディテールを決める役割があります。ドラムなどの大きい音の楽器の音量感や音圧感は、小さいスピーカーでは再現できないため、この大きさのスピーカーが適しています。
ニアフィールドモニターについて
ラージスピーカーはとても大きな音を出すことが可能ですが、大きすぎて細かく聞き取れない部分が出てきます。そのような時に使用するのが『ニアフィールドモニター』です。主にノイズのチェックに使用されます。YAMAHA NS-10Mもこれに分類されます。
アクティブ・パッシブ~電源供給の違い
さらにスピーカーは電源の供給でも2つの種類に分けることができます。 具体的な違いは、スピーカーを鳴らすために電気信号を増幅するアンプがスピーカーに内蔵されているかいないかです。
- アクティブタイプ:アンプが筐体内部に備え付けられており、電源ケーブルをつなぐことで使用することができます。
- パッシブタイプ:アンプを別に用意する必要があります。YAMAHA NS-10Mはパッシブのスピーカーになります。
アクティブタイプのスピーカーは比較的安価で小型なものが多かったため、音が悪いという印象がありましたが、今では技術も向上し、省スペースで使用できるため、エンジニアの持ち込みのスピーカーはアクティブタイプがほとんどです。
パッシブスピーカーはアンプが必要である程度スペースを必要としますが、アンプの性能によっては出力が高く、比較的音質が良いのが特徴です。また、物によって音質が異なるため、スピーカーの組み合わせで自分好みにカスタマイズができるのも魅力のひとつと言えます。
時代が進むに連れてスピーカーはよりクオリティが高いものが製造されてきました。高級なものだと数百万円を超えるスピーカーもありますが、1978年に発売されたYAMAHA NS-10Mは、大きいサイズのスピーカーが一般的だった時代に低価格で小型の若者スピーカーとして発売され、当時はペアで約5万円でした。
YAMAHA NS-10Mの種類
YAMAHA NS-10Mは様々な種類があります。その中から有名なものをご紹介します。MIT STUDIOにはYAMAHA NS-10M Studioをご用意しております。
YAMAHA NS-10M Studio
エンジニアの好みによって、縦置きと横置きを使い分けていますが、当時は横置きのスピーカーとして売られていたようです。元々一般向けに発売されていたNS-10Mをスタジオ用として使えるように改良されたモデルです。
YAMAHA NS-10M PRO
縦置き用に開発されたもので、ロゴの向きも縦置きで見やすいくなっています。 NS-10M Studioを家庭用として改良したモデルです。Studioとの違いはツイーターに貼ってあるフェルトの大きさの違いです。これは高音域に対して影響してきます。
NS-10Mは高音域が出すぎると言われており、StudioとProのバージョンではこれが改良されています。そんなYAMAHA NS-10Mも、2001年のワシントン条約によりスピーカーに使われていた材料が廃盤となり、製造中止になってしまいました。しかし今でも需要があり、中古では未だに多くで取引されています。そんな中、本家NS-10Mを開発したYAMAHAを含め、各社が後継機種となるようなスピーカーを開発し発売しています。
主な後継機種
YAMAHA HS Series
見た目もそっくりな本家YAMAHAから出ているパワードタイプのスピーカーです。
Avantone CLA-10
このスピーカーはあの有名なChris Lord Alge(クリス・ロード・アルジ)の監修の元、YAMAHA NS-10Mの再現を目標に作られた、本家と同じパッシブタイプのスピーカーです。基本的な性能はYAMAHA NS-10M Studioと同じように作られています。
今回はYAMAHA NS-10Mについてご紹介しました。NS-10Mの発売当初に比べ、レンジも広くより原音を忠実に再現できるスピーカーが増えてきていますが、NS-10Mが未だに使われているように、このスピーカーでなければ出せない音があります。ぜひ当スタジオで音を体感してみてください。
著者:(音楽エンジニア)